糖尿病性網膜症

                                                                    

                                                             
糖尿病性網膜症は、進行すると網膜剥離や血管新生緑内障に至って失明してしまう病気です。成人の中途失明原因(2005年)は第1位緑内障(20.7%)、第2位糖尿病性網膜症(19.0%)でした。ただし糖尿病は今後も増加する見込みですから、網膜症による失明者も増加すると予測されています。早期発見、血糖コントロールの上、適切な治療を行うことによって進行を抑え、視機能を維持することができます。

自覚症状が出た時にはかなり進行している、ということも失明率の高い一因となっていますので、内科で糖尿病と診断されたら定期的に眼科検診も受けて、網膜症の発生や進行を防ぐことが大切です。

糖尿病では血管に障害をきたします。
眼のフィルムに当たる網膜の血管がつまり、網膜の酸素欠乏が生じると、それを補おうとして新生血管が出現します。
網膜新生血管は出血しやすく、眼球内(硝子体)への出血を繰り返すうち、増殖性線維がでてきて、ついには網膜剥離を起こします。
また、新生血管が茶色目(虹彩)にできると血管新生緑内障を起こします。普通の緑内障と違って進行すると点眼薬、手術等の治療に非常に抵抗性があります。

糖尿病性網膜症には大きく分けると、単純性網膜症、前増殖期網膜症、増殖期網膜症という3つの病期があります。
新生血管が出てくると増殖期に入り、放置しておくと失明の危険が高くなります。したがって、前増殖期までの段階で発見し病期に応じた治療をしておくことが大切です。

単純性網膜症の時期には、定期検診や内服治療で経過観察をします。
前増殖期になるとレーザー網膜光凝固術を行い、網膜の酸素欠乏を改善し新生血管の発生を防止します。
増殖期に入ると、網膜光凝固術の他硝子体手術が必要となってきます。硝子体手術の際も、手術前に網膜光凝固術が充分できている程手術後の経過がよいと言えます。虹彩新生血管に対しても早期であれば網膜光凝固術が有効です。しかし、新生血管は進行するとレーザーで抑えることができなくなります。

視力は眼底の中心にある黄斑部で出しています。
糖尿病性黄斑症は、病期に関わらず黄斑部に出血、浮腫(はれ)、沈着物が生じるもので、視力低下の原因となります。この場合も網膜光凝固術や硝子体手術が必要となることがあります。

網膜症を悪化させる因子として以下のものがあります。
       ☆糖尿病とわかってから10年以上
       ☆年齢が若い(若いほど増殖能力が高いので、いったん網膜症が始まると進行しやすい)
       ☆ヘモグロビンA1c高値
       ☆血糖値の変動が大きい
       ☆低血糖を起こしやすい
       ☆糖尿病性腎症の合併
       ☆高血圧

但し、血糖のコントロールが良くても網膜症のみ進行することがありますから注意を要します。

糖尿病は一生関わっていく必要のある慢性的な病気ですから、あきらめず、気長に病気と付き合っていくことが大切です。


                                                                      

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